音叉の癒しとは

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音叉(tuning fork)について

楽器の奏者には音叉によるチューニング方法、物理学を専攻した方には周波数(Hz)の数式
「f(周波数)=1/t(周期:単位秒)」は馴染みがあると思います。
音叉は、ブーンという振動(応答)でひとつの特定の周波数“純音”を発生し、さらに“共鳴”させる機能も持ちあわせています。そのため楽器の調律に使われてきました。

音叉の形はイギリスの王室楽団に所属していたトランペット奏者のジョン・ショアが調音のために発明したのが起源です。それまではピッチパイプ(調子笛)が使用されていました。

音叉の用途は多岐にわたり、音楽用(調音や基音の確認)、医療用(検査)、理科実験用(共鳴の実験)、校正用(ドップラー効果を利用したスピードチェッカーの校正)、ヒーリング用
等があります。

黄金のフェイシャル音叉マッサージ®では、ドイツ製の24金仕様128Hz音叉と256Hz音叉に24金のアタッチメントをつけた音叉(医療用ではありません)を使用します。

総合音叉マッサージ®とセルフケア講座で使用する音叉は、ニチオン製の医療用128Hz音叉に日本音叉療法協会特注の使いやすい持ち手とアタッチメントがついた特注音叉です。

ピュタゴラスについて

音楽または音による癒しの歴史は、古代ギリシャ時代まで遡ることができます。

「三平方の定理」で知られるピュタゴラス(589BC~496BC)は、紀元前6世紀に現在の南イタリアにてピュタゴラス学派を立ち上げ、「万物は数なり」との教えをもとに数学・幾何学の基礎を作り上げ、その一環として宇宙との調和をもたらす音楽についての研究を行いました。その結果、音楽の調律法である「ピュタゴラス音階」を発見し、「音楽的階調理論(ハルモニア理論)」を提唱しました。このようにピュタゴラス学派は、
宇宙の原理を理解するための学問として、数学とともに音楽を非常に重視しました。

この考え方は、ギリシャの哲学者ソクラテスの弟子のプラトン(427BC~347BC)に継承されます。プラトンは40歳のころ、ピュタゴラス学派との交流からピュタゴラスの思想に大きな影響を受け、数学・幾何学とともに音楽と「ハルモニア理論」に基づく天文学を重視するようになりました。彼の著書『国家』においても、あるべき国家の形成のための方法論として音楽と天文学を、重要なテーマとして取り上げています。その思想は、プラトンの弟子のアリストテレス(384BC~322BC)の『政治学』などにも受け継がれました。

そして、新プラトン主義の哲学者で、プラトンを通じてピュタゴラス学派の研究を行ったイアンブリコス(245~325)は、著書『ピュタゴラス伝』の第15章および第25章において、ピュタゴラスが弟子たちに、人間の肉体と魂における不調和であるところの病を癒すため、リラや歌唱を伴う音楽による肉体と魂を調和させるための処方を伝授したことを、現在に伝えています。

音叉の癒しについて

音叉を使ったヒーリングは「振動」による優しく静かな癒しです。聴覚ではなく振動感覚にアプローチします。振動感覚は五感の中の「触覚」に分類され、触覚は視覚の次に情報を脳に送る量が多いといわれています。皮膚は触覚を受け取るセンサーであり人体最大の臓器です。

私達のからだは約60兆の細胞でできていて、人体の60%が水分です。
音の振動は空気中よりも水中さらに固体の順で速く大きく伝わります。その速さは、空気中では約340m/秒、水中では約1,500m/秒。鉄道のレールに耳をあてる映画のワンシーンも印象的です。
音叉の振動は皮膚からその奥の水分を多く内包した細胞へと伝わり、固体である骨から(骨伝導)全身に届きます。肌表面のアプローチよりも音叉の振動は更に深く伝わります。
深部の細胞まで振動が届くことで、細胞の内部で一酸化窒素(NO)が大量に放出され、特に血管内側の細胞が一酸化窒素により柔らかく拡がれば血流の改善が期待でき、音叉の振動による刺激の作用でリンパ液も流れやすくなることが期待できます。

私達は人の手で行うということを大切に考えています。

機械で周波数を出せば精密に一定の振動の持続が可能で、そのようなマッサージ器機も数多く存在しています。それでも、人が関わることにこそ意味があり意義があるのです。からだの声を聴くこと。呼吸をあわせること。人の意識が、深い癒しに大きく影響することを私達は知っています。

太極拳の先生もいつも話してくださいますが、私達を私達たらしめている60兆の細胞ひとつひとつには意思があるそうです。受精卵が細胞分裂していく間も相談しあって各臓器になっていくそうです。生命維持のため細胞はコミュニケーションをとりながら常にバランスをとり健康を保てるように相談し尽力していて、私達がそこに気づくだけで、細胞達は喜んでパワーが向上するようです。どうぞご自身のからだを労ってあげてください。ご自分の手で触ってあげられる部位はセルフケアが可能です。ぜひ、愛情こめて言葉をかけながら、からだに触れてみてください。特に足裏の細胞はとても喜んでくれるみたいです。

ご自身でできるセルフケアに加えて、自分では無理な部分は他者の力をかりて、体調のバランスが崩れる前の予防的メンテナンスをどうぞ今まで以上に意識してみてください。それでも加療が必要になったら医療機関で治療をしっかり受けてください。そして、音叉の癒しもメンテナンスの選択肢のひとつに加えてくださると嬉しいです。全国にいる日本音叉療法協会認定プラクティショナーが心をこめてサポートいたします。

エビデンスとナラティブ

海外の医学的分野で周波数の効用の研究が進んでいます。128Hzが細胞内の一酸化窒素に作用し活性化させる関係が医師により解明され興味深く述べられており、海外では音叉は既に医療現場で使用されているようです。

国内メディアでも体内の一酸化窒素の働きについて知ることができますし、理学療法やリハビリの現場では電気による振動が活用されています。

人のからだはひとりひとり違います。自分にとって確かに効果があるのかどうか。個別の物語をもつ自分のからだに聴くことが私はやはり大切だと感じます。それは他者に効果がある治療が自分には合わなかった経験から。自分で調べて、自分で感じて、自分のからだの声を聴く。エビデンスもナラティブもどちらも大事。私は自分自身がエビデンスだと思っています。

さいごに

WEBサイト制作をこころよく引き受けて素敵に作りあげてくださったWalk The Talk林くん、音叉の鳴らし方から身体の知識まで丁寧に教えてくださり助言くださる日本音叉療法協会の山本真澄先生、心もからだもクタクタだった私にいつも笑顔で優しく接してくださり励ましてくださる漢方内科の永島知子先生、頸肩腕症候群の治療当初から優しく寄り添い励ましアドバイスしてくださったリハビリの先生、ボディトリートメントの手技を教えてくださったクリアヒーリングサロンのみなさん、筒音で笛が振動するのが好きで感動してたよねと楽器が振動する心地よさにいつも一番共感してくれる篠笛の四恩緋先生、モニター施術に付き合ってくれた心優しい友人の方々・・・そして、いつも一番近くで支えてくれている家族に、心から感謝します。本当にありがとうございます。

参考文献


  • 一般社団法人 日本音叉療法協会『音叉セラピーの世界へようこそ』ブックコム,2020年
  • John Beaulieu『Human Tuning』邦題「人間チューニング」柏岡誠治 訳 バイオソニックエンタープライズ出版,2010年
  • 國友正和ほか『改訂版 総合物理2』数研出版,2019年
  • 中山健夫『健康・医療の情報を読み解く 第2版 健康情報学への招待』丸善出版,2014
  • 勝 道興『音響のオルガノン-ざわめく波動の存在相へ-』晃洋書房,2001年
  • キティ・ファーガソン『ピュタゴラスの音楽』柴田裕之 訳 白水社,2011年
  • S・K・ヘニンガー・Jr.『天球の音楽-ピュタゴラス宇宙論とルネサンス詩学』山田耕士・吉村正和・正岡和恵・西垣学 訳 平凡社,1990年
  • イアンブリコス『ピュタゴラス伝』佐藤義尚 訳 国文社,2000年
  • 『深海は音の世界』国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)
    https://www.jamstec.go.jp/godac/j/godac/file/jamstec/pc_3_4_8.pdf
  • 『音の伝わり方』国立大学法人 大阪教育大学
    https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/oto/naiyou/seisitu2/tutawari.html
  • 『プラスマイナス0.05ヘルツまで調整する熟練の技/音叉を作る仕事』YAMAHA
    https://jp.yamaha.com/sp/myujin/26121.html

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